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スカイの物語3:バロンのために

Discussion in 'ヒーローたちの物語' started by Strike, Sep 5, 2015.

  1. Strike
    Offline

    Strike Vainglory Developer Super Evil Megacorp

    [​IMG]
    「シルバー家がお選びになられます...」

    バロンの母親がタイルの置かれたテーブルに手を伸ばした時、スカイはバロンの目に留まろうと一歩前に出た。

    「...ナリ・タイガー」

    ナリのタイルが取り上げられた時、群衆の中で驚いて息を飲んでいる者は一人しかいなかった。 バロンの視線が選ばれたばかりの未来の花嫁から動くことはなかった。スカイの名前が刻まれたタイルは、その夜、誰に選ばれることもなく、バロンの手の中に握られたままだった。 事態を把握するにつれてスカイは胸が苦しくなり、息が詰まった。

    「その時は、君に将軍になってもらいたい」


    彼は"妻"になってくれとは言わなかった。

    スカイは後ずさりしながら人混みの中へ消えると、ドアを通り抜けて走り出した。 彼女は乱暴にリングを髪から外し、夜の闇へと丘を下って駆け出していった。 彼女は走り続けた。本能が彼女に逃げろと言っていた。

    スカイは格納庫の巨大な巻き上げ扉の前で止まった。 乱れた髪が彼女の顔にかかっていた。 他の少女なら家に帰って母親に抱かれて涙するのだろうが、彼女はいつも父と一緒にガレージにいて、何かを修理したり、逆に幼い頃には何かを壊している方が気持ちが落ち着いた。

    いい気分だった...いや、何も"いい"気分ではないのだが、韓服を脱ぎ、いつものように髪を丸めて化粧を落としてしまうと、"正しい"気分であるように感じた。自分のジャケットの嗅ぎ慣れた油と火薬の匂いが心地よかった。 払い下げられたメックに乗り込み、他のパイロットたちと会う時に、一体どんな顔をすればいいだろうかと考えた。火がついたミニオンのように走って出て来てしまったことを、"オンマ"にどう謝るべきか。


    しかし、考えると思い浮かぶのはバロンの言葉だった。

    鉱山なんてなくなればいいと思ったこともあった。 暗く静かな格納庫でメックの中にいると、彼がまだすぐ側にいて言葉を発しているように感じた。

    ...そうなればメックも戦車もいらない。ミニオンも必要ない。馬鹿げた選択の儀式もね...

    「選択は私たちの手に委ねられてる」 スカイは小さな声で言った。


    バロンにはもう選択の余地はない。しかし自分には、彼のためにしてあげられる選択が残っている。 彼女はメックを起動すると、グローブに手を通してハンドルを握った。誰かに阻止される前に、時間が経って我に返り、自分自身が考え直してしまう前に、彼女はメックを外に向かって走らせた。

    今夜受けた屈辱や、これから行おうとする事の重大さにもかかわらず、軽量メックの操縦にスカイは爽快感を覚えた。凄く動きやすくて、"速い"。たとえ将軍の娘でも未許可でメックを使用すれば犯罪になるので、彼女は正面ゲートを避け、ミニオンキャンプを通って静かにメックを進ませた。獣たちは乱雑に寝転がっていびきをかいていた。ミニオンは力は強いが、命令には服従するし頭の回転は鈍いので、たいして問題にはならなかった。彼女はセキュリティーゲートを跳び越え、ミカン畑の中をジグザグに進み、田んぼやキャベツ畑の上をホバリングして進んでいった。あちこちに錆びて壊れた田植え機や"すき"が落ちていた。それらはバロンの祖先が銀を掘り当てた時に、ブラストホールドリルやフロントローダーへと取って代わられた最初の機械だ。彼らがクリスタルを掘り当てた時、クリスタルの中に存在するハルシオンパワーに他の一家も気付き、掘削機は兵器へと改造された。農地は戦場となり、踏みつけられて荒らされて、泥は黒い血で染まった。

    メックは丸まった有刺鉄線の上を滑空し、まるで勇ましいワシのように強化壁の上に降り立った。ボール型のセキュリティーロボットが彼女の周りに集まってきて、メックの識別番号と彼女の網膜をスキャンし始めた。

    「パイロット705、あなたには廃棄メック1864の使用許可がおりていません。直ちに、本部へ戻って...」

    スカイはトリガーを引き、左に平行移動しながら発砲した。1機、また1機と、ロボットは破壊されて泥の上に落ちていった。


    青い光の中を見下ろしながら、彼女はスイッチを跳ねあげてミサイルを装填した。

    「よし」彼女はオートキャノンを手で軽く叩いた。「この戦争を終わらせましょう」ジェットノズルが起動された。メックは高く上昇し、鉱山の上で静止した。


    最初のミサイルが地中深くに突き刺さった。

    爆発の衝撃が地面を揺らし、クリスタルの無数の小さな破片が飛び散った。破片は彼女のジャケットや足に突き刺さり、スカイは両手で頭を抱えた。

    もたもたしている暇はなかった。誰かに止められる前にやり遂げなければならない。彼女は左右に移動しながら次々とミサイルの一斉射撃を行い、鉱山の上に雨のようにミサイルを降らせながら、何世代にも渡って文明を支えてきたクリスタルを破壊した。多くの人々がそれを巡って争い、そして命を落としていったハルシオンパワーは、夜空を照らし、夜の空気の中へと消えていった。

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